ゾンビ 映画レビュー: ジョージ・A・ロメロの傑作

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※このレビューはネタバレを含みます!

1. 映画概要

『ゾンビ』(原題: Dawn of the Dead)は、1978年にジョージ・A・ロメロ監督によって制作されたホラー映画である。
本作は、前作『ナイト・オブ・リビングデッド』の3週間後を舞台にしており、荒廃したアメリカ社会にゾンビがはびこる世界を描いている。
ストーリーの中心となるのは、ほぼ崩壊した社会の中で生き残るために奮闘する4人の主人公たちである。
主要な舞台となるのは、物資を確保するために逃げ込んだ大型ショッピングモールだ。
このモールは彼らに一時的な安全と食料を提供するが、次第にゾンビの侵入や略奪者たちの襲撃により安全が脅かされることになる。
ジョージ・A・ロメロはこの作品で、当時のアメリカ社会に対する鋭い風刺を込めている。
ゾンビという存在を通じて消費社会の無意味さや、物質主義に囚われた人々の心理を描いているのである。
ゾンビたちがショッピングモールに集まる姿は、生前の行動習慣の残滓であり、それが風刺画でもある。
そして、終盤にかけての緊張感あふれるシーンや悲壮感たっぷりのラストは、観る者に深い印象を与える。
特に印象的なシーンは、主人公ピーターが自殺を決意するが、ゾンビの襲撃によって生きることを選び、フランと共にヘリコプターで逃れる場面である。
このエンディングは、希望と絶望が交錯する瞬間を鮮やかに描いており、後の作品にも多大な影響を与えた。
また、特殊メイクを担当したトム・サヴィーニも、この作品でその名を広く知られるようになった。
彼の手によるゾンビのリアルなメイクアップは、当時の観客に強烈なインパクトを与えた。
『ゾンビ』はその恐怖演出だけでなく、社会風刺や人間ドラマを織り交ぜた深いテーマ性を持っている。
そのため、ホラー映画の枠を超えて映画史に残る名作とされている。

2. スタッフ・キャスト

「ゾンビ」には、その裏方にも一流のスタッフが揃っている。ロメロ自らが脚本も手掛け、そのユニークな世界観と社会風刺を映画に落とし込んでいる。特殊メイクはトム・サヴィーニが担当し、その名は「13日の金曜日」や「死霊のえじき」といった他のホラー作品でも知られている。サヴィーニのメイクアップは、この映画に独自の怖さとリアリティを与えている。

音楽はゴブリンとダリオ・アルジェントが担当。ゴブリンは特にイタリアのホラー映画「サスペリア」の音楽で有名であり、その不気味で緊張感のあるサウンドトラックは映画の恐怖を一層引き立てている。製作にはクラウディオ・アルジェント、アルフレッド・クオモ、リチャード・P・ルービンスタインが参加しており、彼らのプロデュースによって映画は高品質に仕上がっている。

そして、俳優陣も見逃せない。デビッド・エンゲ、ケン・フォリー、スコット・H・ライニガー、ゲイラン・ロスといったキャストが、それぞれ個性的なキャラクターを演じている。彼らの演技が、映画の雰囲気をさらに盛り上げているのは言うまでもない。

「ゾンビ」はそのスタッフ・キャストの豪華さによって、ただのホラー映画に留まらず、社会への痛烈な風刺や独自のテーマ性を持った名作となっている。映画を制作する上での各分野の専門家たちの協力が、このような作品の完成に大いに貢献している。

3. 映画の評価と意義

この映画は、当時のゾンビ映画の金字塔として称され、ホラー映画の枠を超えて映画史に残る重要な作品となっている。ロメロ監督の代表作である『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の続編として制作された本作は、ゾンビ映画のスタイルを決定づけ、後の多くのクリエイターに影響を与えた。

『ゾンビ』の評価が高い理由の一つは、映画が持つテーマ性にある。特に人間社会への痛烈な風刺が込められている点は注目に値する。物語の舞台となるショッピングモールは、消費社会の象徴であり、そこに集まるゾンビたちの姿は、無目的に消費を追い求める現代人を風刺している。また、映画のクライマックスで描かれる人間同士の争いや略奪行為も、人間の本質を鋭く突いている。

現代の視点で見ると、『ゾンビ』のメイクアップはチープに感じられるかもしれない。しかし、当時の観客にとって、この映画は衝撃的な存在であった。当時のリアルなホラー描写と比べると、現在のホラー映画とは違った意味での恐怖感を提供していた。特殊メイクを担当したトム・サヴィーニの仕事も見逃せないポイントである。

さらに、この映画は音楽の面でも評価されている。イタリアの音楽家ダリオ・アルジェントが手掛けたサウンドトラックは、映画全体の雰囲気を一層引き立てている。音楽によって恐怖感が増幅され、観客を物語の世界に引き込む効果を持っている。

総じて、『ゾンビ』はホラー映画のジャンルを超越し、社会風刺や人間の本質を描き出すことで強いインパクトを残した作品である。この映画が持つテーマ性やメッセージは、今なお色褪せることなく、多くの観客に影響を与え続けている。ホラー初心者から映画マニアまで、幅広い層におすすめできる名作である。

4. 見どころとエンディング

映画「ゾンビ」は、その破壊力あるシーンとテーマが観客の心に深く刻まれている。特にショッピングセンターに集まるゾンビたちと、それを襲う不良たちの場面は、異様な迫力がある。ゾンビたちがショッピングセンターに集まる理由は、生前の生活習慣のなごりであるという設定が、資本主義社会への鋭い皮肉を感じさせる。一方で、不良たちはゾンビたちをまるで「人間狩り」のように狩り、楽しみながら暴力を振るう。そのアンモラルさは、観る者に衝撃を与える。

ピーターとフランがヘリで逃げるラストシーンも、この映画の見どころのひとつである。ゾンビに囲まれたショッピングセンターで絶望的な状況に追い込まれた二人は、最終的にヘリで逃走する。ピーターは一度は自殺を決意するが、寸前で思い留まり、ゾンビと格闘しながらフランの待つヘリに飛び乗る。その瞬間、二人はわずかな燃料のヘリコプターで夜明けの空へと飛び立つ。このシーンは、まるでホラー版「卒業」のような味わい深いエンディングである。

また、この映画にはより絶望的で厭世的な別エンディングも存在する。この別エンディングでは、ピーターが実際に自殺し、フランも自らヘリのローターに飛び込み命を絶ってしまう。このエンディングは、アメリカン・ニュー・シネマの影響を受けた70年代の映画らしい暗さと厭世観を強く反映している。

ショッピングセンターでのシーンとエンディングは、この映画の中でも特に印象的であり、観る者に強い印象を残す。「ゾンビ」はホラー映画であると同時に、社会風刺や人間の暗部を浮き彫りにする作品である。そのテーマ性は、公開から数十年経った今もなお色褪せることなく、現代の観客にも深い示唆を与えるものである。

5. まとめ

同監督の『ナイト・オブ・リビングデッド』の3週間後の世界を舞台にした本作は、ゾンビ映画の頂点に位置する作品と言っても過言ではない。リアルタイムで観た当時の観客にとって、その衝撃は計り知れなかった。

ゾンビのメイクアップが現在の視点から見るとコントのようでありながらも、この作品は今日に続くゾンビ像を決定づけた。ゾンビ映画の原点であると同時に、そのメッセージ性やテーマは色褪せることがない。ホラー映画の枠を超え、映画史においても重要な位置を占める。ホラー初心者にもおすすめできる作品であることは間違いない。

監督・脚本を手がけたロメロは、「ゾンビの父」として知られる。特殊メイクを担当したトム・サヴィーニや、音楽を担当したダリオ・アルジェントなど、豪華なスタッフによって作り上げられた本作は、そのテーマ性にも注目が集まる。ゾンビが集まるショッピングセンターや、その襲撃を楽しむ不良たちの描写は、資本主義や人種差別に対する皮肉を含んでいる。

本作のエンディングでは、ピーターが一度は自殺を図りながらも最終的にはフランと共に燃料の少ないヘリで脱出する姿が描かれている。これにより、暗い未来を示唆しつつも一筋の希望を残している。この場面は『卒業』のエンディングを彷彿とさせるものである。

『ゾンビ』は資本主義社会の過剰な消費文化や白人優位の人種差別に対する批判を含んでおり、当時のアメリカ社会の問題点を鋭く風刺している。このような重層的なテーマを持つホラー映画は、今なお色褪せることなく、視聴者に多くの示唆を与えてくれる。ホラー映画マニアだけでなく、映画好きなら一度はチェックすべき作品である。

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